「ディスカスが好む飼育水作り」
まずは元となる水のPHを測ってみてください。
地域によって異なりますが、だいたい元の水道水はPHは平均して7前後です。
この元水をディスカスが好む弱酸性の水質に調整するする必要があります。
本来水は酸素と交わることで必ずPHは上がるので元水を調整しないでフィルターを廻すと翌日PHは7.5くらいに上昇しています。
PHの上昇しにくい水質を作るためにまずPHマイナスを入れセット初日はPH6の水を作ってください。
その後、バクテリア(バイコム78 500ml)を用意し250mlフィルターの中に入れてください。
翌日PHを測ると必ず6.5?6.7付近まで上昇しているのでさらにPHマイナスをいれPH6.0になるよう調整して下さい。
残り250mlのバイコム78を3?4日に分けてフィルター内に入れて下さい。
バクテリアの投入は必ずPHマイナス投入後にして下さい。
この作業を数日間繰り返すことでPHの上昇しにくい弱酸性のディスカスが好む水ができるのです。
ディスカス投入後PHが上昇しそうな飼育水であればPHマイナスではなくディスカスに安全なブラックピートを使用してください
(ブラックピートはセラ社製がオススメ)
PHマイナスは直接水槽に入れないでください。
「ディスカスの水合わせ方法」
持ち帰ったディスカスをバケツに移します。
図のようにエアーチューブを使ってゆっくり水合わせを行います。
必ず水槽内のPHを測っておいて下さい。
極端に水質の差がなければ30分程度時間をかけて水合わせを行ってください。
元の水の量の2倍になったら半分捨てて下さい。
このときもう一度PHを測って下さい。
再び水を合わせ、いっぱいになった時点でもう一度半分水を捨てて下さい。
この工程は2度行って下さい。
立ち上げ後からろ過材の交換時期まで
水槽を立ち上げディスカス飼育がスタートすると3日目から徐々に餌を与えだします。
このとき水槽内のバクテリアの活動はまだ活発ではないので極端に多いえさの量は控え必ず食べきれる量を与えてください。
初期の段階では水槽内にアンモニア等の汚れが発生します。
テスター等で測定してください。
極端に高い数値や、白にごりを起こさない限り大量の換水は行わないでください。
アンモニアが発生しても大量に換水は行わず5分の1から4分の1の換水を行い水槽内のアンモニアを亜硝酸から硝酸塩まで変化させるようきっかけを作り様子を見てください。
初期の段階ではバクテリアを補充することを忘れないでください。
このとき換水に使う水は水槽内のPHに合わせた汲み置いた水を使用して下さい。
PHを調節していない水を使用するとPHが極端に上がり立ち上げ初期のディスカスに負担をかけます。
アンモニアが硝酸塩まで変化すると飼育水のPHは徐々に下降しだすのでバクテリアが活動している目安となります。
この状態になれば硝化活動が行われているので安心です。
(立ち上げから3週間から1ヶ月ほどです)
PHが穏やかに下降する水質になりいよいよ換水を本格的に行います。
PHが6.5の飼育水が3日後にPH6の水質に下降しているのなら再び6.5に戻すだけの換水を行います。
極力水質が急変しない換水を行ってください。
立ち上げから2?3ヶ月ほどは穏やかにPHが下降していた水質も立ち上げから3ヶ月以降は下降する数値が大きくなってきます。
換水を行っても翌日にはもとのPHに戻っているときはフィルター内の飼育水を取り出しろ過材を軽く洗ってください。
ろ過材に付着しているたんぱく質をとり水質の変化を和らげてください。
ろ過材のたんぱく質を洗うことでPHの急激な降下は緩和されるのです。
ろ過材を洗い水質変化を緩和させている状態も長くは続きません。
ろ過材は洗ったがPHの降下が大きいときはろ過材の交換時期となります。
「ろ過材の交換方法」
ろ過材の交換は一度にすべての交換は行わず必ず半分ずつ行ってください。
まずはフィルター内の入り口付近のろ過材を取り出し残りのろ過材を入り口付近に移してください。
次に開いたスペースに新しいろ過材をセットしてください。
ここでろ過材の交換は終了ではなくバクテリアが新しいろ過材に移る時期を見て
(約3週間から1ヵ月後)
残りの古い半分のろ過材を交換してください。
「理想的なディスカス飼育水質環境」
ディスカス飼育における理想的な水質は一般的に軟水だと言われている。
日本においてごく一部を除けば殆どの地域において飼育に適した軟水が水道水の蛇口をひねれば簡単に手に入る。
その名の通り水が軟らかくそれに比例してpHも中性から弱酸性でGH、KHも低いのが常である。
ヨーロッパなどの硬水の様にまず水そのものを加工する必要が無く使用できる事は環境的に優れていると言えよう。
しかし、その様な軟水であっても塩素やその他薬剤を使用し水道水とされている以上、それらの有害な物質を取り除かないことにはそのまま使用する事は出来ない。
昔は魚を飼う時は前もって水道水を汲み置き、一日寝かせてから使用した。
これは水道水に含まれている塩素をとばす意味でもある。
後にハイポと呼ばれる錠剤のカルキ(塩素)抜きが現れそれが進化し使用しやすい液体のものとなり現在に至っている。
では、それらで処理された水は本当に飼育水に適した水なのであろうか?
水道水中の塩素をただ中和し塩素の素となる成分は残留した飼育水水準のボーダーラインすれすれの水が出来あがっただけと言う事ではなかろうか?
簡単な話、中和すること自体がナンセンスなのである。
中和され残留したその無害と言われる物質は所詮不要の物であり水中に不純物として残る。
その値が高ければ高い程、魚にとって最も重要な器官である鰓に大きな負担をかける。
鰓に支障を及ぼすと食欲、色彩、成長率全てに大きな悪影響を及ぼす事になる。
また不純物から体表を守る為に粘膜の代謝も激しくなり艶も著しく落ちる。
実際に水中に含まれている物など目で判別する事は不可能ではあるが、人間を含め動物に対する空気の影響と同じく不純物とはそれ程までに魚の健康に大きく害を及ぼす。
水そのものが消化器官に入る人間や動物ですら不純物が含まれた水を長年飲用するとそれらの蓄積で著しく健康を損なう。
まして、呼吸器である鰓や体表で直に受ける魚はどうであろうか?
「危険である!!」
ではどうすればよいのか?
ズバリ不純物は除去するのが一番である。
環境問題が大きく問われる現代において飲料水は浄水器を通した水を使用するという事は、今や常識でありそれら機器を魚の飼育水を作る為に使用する事も今では当たり前の事ではなかろうか?
しかし、浄水器なら何でも良いという事ではなくアルカリイオン水や活性水などと呼ばれる電気的・磁気的に水を処理する類はこれに当てはまらない。
ここで最も重要な事は除去することだという事を思い出して頂きたい。
水中の不純物を測定表示する場合、MS(マイクロジーメンス)やPPMという値が使われるがその数値が高い程H2O以外の物質が多く含まれていると言う事になる。
その中味が問題でビタミンやカルシウムその他の栄養素が値を上げているのであれば理想的であるが、水道水中にその様なものが含まれているはずも無く、それら有機物の殆どが有害だとされている。
例えば豊中市の水道水は150~200 MSあり、季節によって変化するが特に梅雨の時期の数値は時に異常な値を示す。
水道工事後などは見れたものではない。
この数値が語る所は大きければ大きい程、魚にとっては危険だという事になる。
簡単な導電率計(TDSメーター)で測定する事ができるので、ご家庭の水道水の数値を測られてみてはいかがだろうか。
現在、不純物を除去するフィルターとして最も優れている物はRO(リバースオスモシス:逆浸透膜浄水器)だと言われている。
塩素副成物質や重金属、細菌などを96%以上除去する能力を持つ。
いわゆる純水製造マシーンである。
造り出される水は無味無臭であり、これで作るコーヒーや水割りなどは本当のピュアな味が生きている。
飲用水や調理水として最も安全でうまい水ではなかろうか。
当社で扱うROシステムがそれにあたるが飼育水にそのまま使用すると問題がある。
MS 5~10と純水に近い為、性質を持たない水でもありpHそのものが水槽の飼育水の酸性度に左右され易い。
又、音や方向を感知する側線が正常な働きをしにくくなる。
この純水に味付けをし、飼育水に適した水を作る必要がある。
ワイドディスカスが生息するアマゾン水系では高い所でMS 50~60、ネグロ川本流に至ってはMS 5~10と著しく低い値が示される。
この数値の中味が魚にとっては無くてはならない自然が作り出したミネラルである。
ジャングルに降り注ぐ雨は腐葉土を通る事によりミネラルを吸収し土中に染み込み完璧にろ過され川に注ぐ。
このスパンは長いもので10年以上かかると言われている。
この様な水質を作る事は殆ど不可能に近いがROを使用した純水に手を加える事によって自然に近いより安全で魚に負担をかけない理想的な飼育水が出来上がる。
現在の飼育環境が水道水を中和しただけの水を使用しているのであれば、徐々に環境を変化させてやろう。
MSもpHと同様に急変させると魚に負担を与える。
安全な切り替え方法としてまずROの純水(MS 5~10)と、それにROに付属している2連結のコットンとカーボンを通し塩素と重金属を除去した水(MS 150~200)を1:2もしくは1:1の割合でブレンドしMS 80~100の混合水を作る。
それを換水時や新しい水槽の立ち上げ時に使用する。
今使用している水槽内のMSとは給餌や排泄物により上がるものなのでMSが200であろうと300であろうとそれ自体が問題ではなくMSを調整した水を使用する事が胆である。
この方法で暫らく管理をしてやると目に見えて体色が揚がり呼吸もゆっくりとしてくるはずだ。
このままであっても従来の管理よりも数段すぐれた方法といえるが事ワイルドディスカスのブリーディングにおいては満足な結果を得る事は難しい。
MSのベースをより落とし飼育水自体をMS100以下に落としてやる必要がある。
これがステップ2であり、ここから純水に上手く味付けする事が飼育者としての腕の見せ所でもある。
ROシステムで作られるMS 5~10の純水に対しディスカスミネラル エキストラビタミン バイタルなどを足して、MS 50~70の栄養水を作る。
MSを上げている成分は不純物ではなく、“栄養”であるという点が大切で、純水の持つ浸透性の高さを利用し魚にとって必要な栄養素を添加するのである。
この配合率はそれこそ魚の様子を見ながら添加する事が前提であり「センス」である。
このMS 50~70の栄養水を使用して飼育するに当たり超軟水故pHの低下という問題が起こる。
この水質の変化を抑制する物がフィルター内部に使用するゼオセラにあたる。
天然鉱石を焼き付けて作られている為、自然のミネラルや鉄分が程良く分泌され多少MSを上げるものの理想的な水質を長持ちさせてくれる。
以上が、ディスカスに使用する理想的な水である。
☆ここまではあくまでも弱酸性に生息する淡水魚に関してで、海水魚の場合ROシステムからの純水に上質の人工海水塩を使用する事でなんなく完璧な海水が出来上がる。
上村 磨佐裕